放射線治療科

お知らせ

・2023年4月に放射線治療機器、治療計画用CTその他関連機器を更新致しました。放射線治療機器は最上位機種である米国バリアン社のTrueBeamを使用しています。
・呼吸同期システムも併せて更新しました。
・023年4月に放射線科は放射線治療科と放射線診断科の2つに分立しました。

ご紹介

原則、院内他科からの併診依頼により診療を行っています。放射線治療の適応と考えられる場合でも、まずはそれぞれの診療科へご紹介ください。通院可能な乳癌術後照射、前立腺癌の根治照射、および肺・肝臓・脳への定位放射線治療については放射線治療科への直接のご紹介も受けていますので、当院地域連携センター(046-827-1117)へご連絡いただいて、ご予約ください。
紹介状なしでの受診はできませんので、当院での放射線治療をご希望の患者さんは、まず現在の主治医の先生にご相談ください。

診療内容

悪性腫瘍(がん)の放射線治療が主体で、年間500件程度の患者様を診療しています。放射線治療のみで治癒を目指す根治的放射線治療、抗癌剤と併用して治癒を目指す根治的化学放射線治療、手術の補助を目的に行う術前・術後放射線治療、症状を和らげる緩和的放射線治療などがあります。また、ケロイドなどの良性疾患に対しても放射線治療を行うことがあります。
当院では「① 3次元原体放射線治療」、「② 強度変調放射線治療」、「③ 定位放射線治療」、「④ 電子線治療」の中から、病状/病態ごとに最適なものを選択して行っています。

①3次元原体放射線治療:略称3D-CRT

 従来から行われてきた方法です。特別なCT(治療計画CT)を最初に行い、その情報を元にして最適に照射できるようにX線を照射する方向や量を決定します。比較的簡易な方法で、標的内は概ね均等に放射線が照射されます。主な対象疾患は乳癌術後照射(42.56グレイ/16回)などです。

②強度変調放射線治療:略称IMRT

 3D-CRTの技術を応用した方法ですが、放射線の照射角度や強度分布を細かく分割して最適化する高精度治療です。強弱をつけた不均一かつ複雑な照射が可能なため、放射線が効率的に病変に作用し、同時に周囲の正常臓器へ与える有害事象を最小限に留めます。主な対象疾患は前立腺癌(60グレイ/20回)、頭頚部癌(70グレイ/35回)への根治照射などです。前立腺癌の根治照射では、IMRTの技術によって可能となった中程度寡分割照射(20回法)を採用していますので、短期で照射を終えることができます。
  • ← 当院の症例。下咽頭癌に対するIMRTの線量分布図。重要な正常臓器である頚髄などを低線量に抑えながら、腫瘍へ高線量が照射可能です。

  • ← 当院の症例。前立腺癌術後再発に対するIMRTの線量分布図。重要な正常臓器である直腸などを低線量に抑えながら、腫瘍へ高線量が照射可能です。

③定位放射線治療:略称SRT

 3D-CRTやIMRTの技術を応用した方法で、限局した癌に対して多方向からの放射線を1点集中で照射する集光的高精度治療です。照射する範囲が小さいため、1度に大量の放射線を照射可能であり、1週間程度の短期間で完遂することができます。小型で少数の転移性脳腫瘍であれば1回照射も可能で、定位手術的照射(SRS)と呼んでいます。主な対象疾患は肺癌(48グレイ/4回)、転移性脳腫瘍(24グレイ/1回)などです。より有利な治療効果をあげるため、当院ではIMRTの技術も併用して行っています。治療成績は非常に良く、肺癌では手術同等の成績であり切らずに治せる手段となっています。転移性脳腫瘍では手術や抗がん剤よりも効果や低侵襲性で優れ、定位放射線治療が第一選択となっています。
  • ← 肺癌に対する体幹部定位照射の当院の例。SBRTの線量分布図。正常な肺野に大きなダメージを与えずに、腫瘍へピンポイントに集中照射が可能です。手術に匹敵する成績が得られます。

↑ 当院の転移性脳腫瘍に対する定位手術的照射の例。線量分布図。正常な脳実質にダメージを殆ど与えずに、腫瘍へピンポイントに集中照射が可能です。転移性脳腫瘍への標準治療となっています。


④電子線治療

 従来から行われてきた方法です。特別なCT(治療計画CT)を最初に行い、その情報を元にして最適に照射できるように電子線を照射する方向や量を決定します。表在病変や身体の浅いところに限局した病変に使用されます。主な疾患はケロイド術後照射(15グレイ/3回)などです。

 スタッフは常勤の放射線治療専門医2名+応援医師3名、看護師3名(がん放射線療法認定看護師1名)、放射線技師6名(うち医学物理士2名、放射線治療品質管理士1名、放射線治療専門技師2名、放射線取扱主任者第1種2名、重複保有あり)、事務員2名で業務にあたっています。
 最上位機種の放射線治療機器や専用治療計画CT装置、呼吸同期システムを保有し、複数名の放射線治療専門医のほか医学物理士や認定看護師などスタッフも充実しています。
 また当院のがん登録数は大学病院とがんセンターを除いて神奈川県内最多であり、多様な症例を多数経験しています。
 さらに当院の救急車受け入れ台数は全国有数で救急診療でもトップクラスです。急激な症状の出現ないし悪化により救急受診した結果、悪性腫瘍が発見され、かつ早急に放射線治療を要することも稀ではありません。そのような「がんの救急」症例も多く経験しています。
 このように、高い総合力で質の高い放射線治療を提供できていることもあり、当院は横須賀・三浦地区で唯一の地域がん診療連携拠点病院に認定されています。