腎がん

腎がん

l. 腎がんとは

腎は体の腰の高さのあり、左右にひとつずつあり、尿を作っています。
腎がんは腎実質より発生する悪性腫瘍です。呼び方が似ていて聞き間違える ことがある腎盂がんとは種類、性質が異なり、治療方法に違いがあります。
腎がんの発生頻度は、人口10万人あたり男性は4.9人、女性は1.8人です。 男性は女性より2~3倍発生頻度が多い傾向があります。 好発年齢は50代、60代、70代で平均62歳です。喫煙者ではこの癌の発生率が 非喫煙者の約2倍となります 。腎がんは発生しやすい家系のあることが知られています。
腎臓にできる腫瘍の約90%は腎癌(腎細胞癌)です。

ll. 症状

症状がなしにCTや腎エコーで見つかっているのが、全体の60%を占めており一番多いいです。 無症状うち約25%は検診で発見されています。 有症状で一番多いのは、血尿(20%)ついで腹痛(10%)、腹部腫瘤です。 まれに、腎がんが産生する物質によって、赤血球増多症や高血圧、高カルシウム血症などが引きおこされることがあります。 このがんは、もともと静脈内に進展しやすいのですが、静脈内への腫瘍の進展によって、 下大静脈という腹部で一番大きな静脈が閉塞することがあります。 約7%は肺や骨などへの転移症状により発見されています。

lll. 検査

1. 超音波検査
簡便で浸襲性が少なく、最初に腎腫瘍の有無をチェックする検査としては非常に有効です。

2. CT検査
腎の腫瘍病変の発見精度高い検査です。 造影剤を使用したCTを施行すれば、 良性、悪性の鑑別がかなりの程度で可能で、 周囲リンパ節の転移のチェックもできます。 腎がんは肺に転移を起こしやすいため、肺CTにより肺へ転移の有無を検索します。

3. MRI
強力な磁石(磁場)と電波を利用して体内の臓器の画像を作り出します。 CT同様に腎腫瘍の発見、質の診断に有効な検査です。

4. 血管造影検査
腎腫瘍の血管の様子を詳細に検索することができますが、 血管侵襲が大きいこと、質の高いCT検査を施行すれば 血管造影検査とほぼ同様の情報が得られることなどにより、 近年、施行される機会は少なくなっています。

5. 骨シンチ
腎がんは骨に転移することがあるので、この検査により骨転移を見つけることができます。

6. 血液検査
一般に腎がんの有無の判定はできません。 腎がんが発見された時CRP等の血液の炎症所見が高いほど、一般に進行が早いとさせています。

lV. 病期分類

T1 最大径が7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
pT1a 最大径が4.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
pT1b 最大径が4.0cmをこえるが7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍

T2 最大径が7.0cmをこえ、腎に限局する腫瘍

T3 腫瘍は主静脈内に進展、または副腎に浸潤、または腎周囲脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜をこえない。
pT3a 腫瘍は副腎または腎周囲脂肪組織または腎洞脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜をこえない。
pT3b 腫瘍は(肉眼的に)腎静脈または横隔膜下までの下大静脈内に進展する。
pT3c 腫瘍は(肉眼的に)横隔膜をこえる下大静脈内に進展する。

T4 腫瘍はGerota筋膜をこえて浸潤する。

Gerota筋膜とは、腎臓や副腎を包む固有の膜で、この筋膜内に脂肪とさらにその内側に腎臓が包まれています。

V. 病期

1期 : T1までリンパ節転移,遠隔転移がない。
2期 : T2でリンパ節転移,遠隔転移がない。
3期 : T3でリンパ節転移,遠隔転移がない。>またはTに関係なくリンパ節転移があるが遠隔転移はない。
4期 : T4または2個以上のリンパ節転移または遠隔転移がある。

Vl. 治療

手術療法

腎がんの治療の主体は最も有効性の高い外科療法です。 病期にかかわらず、摘出できる場合は腎臓の摘出、 あるいは腎臓を部分的に摘出することが最も一般的です。 仮に肺や骨に転移があっても、腎腫瘍を摘出した方が 予後がいいという報告があり、手術リスクが高くなければ摘出が行われます。 また、がんをそのままにしていた場合、将来、出血や腹痛、発熱、貧血などの原因になり、 生活の質が低下することなどを配慮して摘出が行われることもあります。

1. 腎摘出術
開放腫手術には側腹部(経後腹膜)からの方法と腹部(経腹的)な方法があります。 当院では術後の回復が早い側腹部からの方法が多いい傾向にあります。 しかし、大きな腫瘍では、安全性、根治性から経腹的に行います。 最近では、7cm以下の腫瘍ならば内視鏡(腹腔鏡)を利用し、小さな傷で手術を行っています。

2. 腎部分切除
各種画像診断の普及から、腫瘍サイズが小さい腎がんが発見される機会が増加しています。 約4cm以下で、部分切除可能な部位にある腎がんに対しては腎臓を全部摘出せず、 腎部分切除を行っています。このような手術を受けた場合でも腎臓を全部摘出した場合でも 再発率、生存率については大差はありませんが、切除部からの尿の漏れや、出血が稀に起こることがあります。

免疫療法

腎がんの治療の主体は最も有効性の高い外科療法です。 病期にかかわらず、摘出できる場合は腎臓の摘出、 あるいは腎臓を部分的に摘出することが最も一般的です。 仮に肺や骨に転移があっても、腎腫瘍を摘出した方が 予後がいいという報告があり、手術リスクが高くなければ摘出が行われます。 また、がんをそのままにしていた場合、将来、出血や腹痛、発熱、貧血などの原因になり、 生活の質が低下することなどを配慮して摘出が行われることもあります。

1. インターフェロン療法
注射による治療です。インターフェロンの薬を週2~3回皮下注射または筋肉注射します。 通院回数を少なくできるため、可能ならば自分で注射の方法を覚えてもらっています。 有効率は15~20%です。インターロイキン、抗癌剤等と組み合わせて施行することもあります。 副作用は発熱、感冒様症状、うつ、血球減少、間質性肺炎などがあります。

2. インターロイキン2
点滴治療です。有効率は10~20%です。副作用は発熱、体重増加、低血圧、肺浮腫です。

◆効果が未確定又は施行症例の少ない方法
ミニ移植 血管塞栓術 凍結療法 熱凝固 放射線療法 抗癌剤治療 サリドマイド

VII. 生存率

全5年生存率は65%、全10年生存率は59%です。 疾患特異的全5年生存率は70%、疾患特異的10年生存率は67%です。
転移がなければ5年生存率80%以上です。腫瘍が7cm以下で転移がなければ5年生存率は90%以上です。 転移があると5年生存率は20%前後です。