上咽頭がん|頭頸部腫瘍(がん)

 

上咽頭がんの治療

概 説

上咽頭は、鼻腔の後方で口蓋より上方の部分です。この部位にできたものを上咽頭がんといいます。中国華南地方に多く、日本を含めたその他の外国では比較的稀です。
現在、わが国における1年間の上咽頭がん発生数は、約500例と推定されます。男女比は3:1で男性に多く、年齢的には40~70歳代に多発していますが、10~30歳代にもみられます。
組織学的には、ほとんどの場合が低分化型扁平上皮がん(80~90%)で、悪性リンパ腫がこれに次いでいます。
頭頸部がんで、通常みられる高分化型扁平上皮がんは少なく(10~20%)、腺組織由来のがんはさらに少なくなっています。
EBウイルスとの関係が示唆されています。症状が出にくく、転移で発見される例も多く、IV期が約70%と進行がんが多いです。

症 状

がんの進展方向により様々な症状が出現します。
初発症状として、耳閉感、難聴、耳鳴といった滲出性中耳炎の症状や、鼻閉、繰り返す鼻出血といった鼻症状、複視などの脳神経症状、頸部リンパ節腫脹などがあります。

診 断

のどの症状を主訴として、耳鼻咽喉科を受診されて上咽頭がんがみつかったという例はほとんどありません。
前述のような症状で耳鼻咽喉科・眼科などを受診されて、上咽頭がんが見つかったという例がほとんどです。そのような症状が自覚されれば、かかりつけの耳鼻咽喉科に相談なさるのがよいでしょう。
ファイバースコープ検査により腫瘍が確認されることが多く、ファイバー下に生検が必要です。
画像診断は、MRI、CTが有用です。とくにMRIは矢状断(側面)が撮影できるメリットがあります。
リンパ節転移の有無は超音波ガイド下細胞診にて行います。

病 期

原発巣の進行度は'T'で示します。

  • T1:上咽頭に限局
  • T2:中咽頭あるいは鼻腔軟部組織に進展するもの 副咽頭間隙に進展しないものはT2a、するものはT2b
  • T3:骨あるいは副鼻腔に進展するもの
  • T4:頭蓋内、下咽頭、眼窩、脳神経に進展するもの

治 療

上咽頭は解剖学的に顔面深部ですので、手術は難しい場所です。
しかし、一般に上咽頭がんは、組織学的に低分化型ということもあり、抗がん剤や放射線がよく効くため、治療はこれらが優先されます。
転移リンパ節を認める場合は、頸部郭清術を行います。

当院での病期別の治療方針は大まかに下記の通りです。

T1N0M0、T2N0M0 放射線治療(+補助化学療法)
T3N0M0、T4N0M0 放射線化学療法(+補助化学療法)
T1-4N+M0 導入化学療法+放射線化学療法(+頸部郭清術+補助化学療法)

予 後

近年の報告では、早期がんである1期で90%、2期から3期で60~80%、4期で40~50%の生存率です。放射線化学療法により、予後が改善されてきています。
進行がんでは遠隔転移(肺、肝、骨などへの転移)の頻度が多くなります。
また局所再発の出現もあり、これらが生存率(予後)に影響を及ぼします。そのため、一時治療後の補助化学療法が生存率を改善させたとの報告もあり、当院でも経口抗がん剤のTS-1服用による治療を最低半年間はすることをおすすめしています。

(当院の治療成績)2011年頭頸部癌学会発表

2003年4月〜2010年12月 12例(男性9例 女性3例)
5年生存率 64.8%
5年疾患特異的生存率 83.3%