口腔および口唇がん|頭頸部腫瘍(がん)

 

口腔および口唇がんの治療

早期の腫瘍については放射線治療のみで治癒するものもありますが、治療の中心手術療法です。切除範囲が大きくなる場合には再建手術が必要になります。手術前や後に放射線治療を併用することもあります。最近では症例に応じ超選択的動注療法を併用して治療にあたっています。口腔がんには、舌がん、口腔底がん、歯肉がん、頬粘膜がん、口唇がんなどがありますが、比較的症例の多い舌がんについて説明します。

概 説

舌は有郭乳頭より前の舌前2/3の舌背・舌縁・舌下面・舌腹をさし、この部分に発生したがんを舌がんといいます。
舌根部に発生したものは中咽頭がんに分類されます。

症 状

舌の痛み、食べ物がしみるなどが主な症状です。舌根部へ浸潤すると耳への放散痛を訴える場合もあります。
前がん病変としての白板症も注目されています。まわりは白板症でも、中心部がやや硬くなっている場合などはがん化も疑われます。
すべてががんになるわけではありませんが、10%程度はがん化すると考えられています。

診 断

診断の基本は視診と触診です。
とくに触診は重要で、視診上は腫瘍を疑わせる所見がないのに硬結を触れることもあります。
画像はMRIが拡がりを把握するのに適しています。
口腔底から下顎骨付近まで浸潤する場合は、CTなどで骨に浸潤がないかを確認します。

病 期

原発巣の進行度は'T'で示し、下記のように定義されています。

  • T1は、最大径が2cm以下
  • T2は、最大径が2cmをこえるが4cm以下(3cm以下をearly T2)
  • T3は、最大径が4cmをこえる
  • T4は、隣接組織(下顎骨、舌深層の筋)への浸潤を認めるもの

治 療

手術摘出が優先されます。原発巣が小さいT1やearly T2の場合、舌の部分切除術を行いますが、嚥下や構音といった機能に障害をきたすことはありません。
原発巣が大きくなると、切除範囲が大きくなるため、機能障害は必発します。嚥下障害をおこしそうな場合、輪状咽頭筋切断術や喉頭挙上術といった嚥下機能補助手術を同時に行うこともあります。
放射線治療を行った場合は、口腔内に放射線があたるわけですから、治療後に味覚障害や口腔内乾燥感をきたします。

当院での病期別の大まかな治療方針は下記の通りです。

T1N0、
early T2N0
原発巣の外科的切除(+病理結果により術後放射線化学療法)
lateT2T3N0 原発巣の外科的切除+患側上頸部郭清術(もしくは術後放射線化学療法)+場合により切除部分の再建手術
T1N1-3,
T2N1-3
原発巣の外科的切除+患側根治的頸部郭清術
N2c(両側)の場合は健側の全頸部郭清術(内頚静脈を温存)も行う。
術後放射線化学療法
T3N1-3,
T4N0-3
原発巣の広範囲切除+患側根治的頸部郭清術(+健側上頸部郭清術)+切除部分の再建手術、術前全身化学療法1、2コース、+切除部分の再建手術
  • lateT2、T3、T4で切除により術後の機能が著しく障害される可能性が高い場合や、手術拒否症例には、 希望があれば手術のかわりに動注化学療法を施行しています。
    しかし、その場合も頸部郭清術は施行しなければならない場合が多いです。
  • 早期がんで小線源治療を希望される方は、神奈川歯科大放射線科を紹介させていただいています。
  • 口腔がんの治療にあたっては、当院口腔外科と一緒にチームで治療にあたっています。

治療後の後遺症

早期がんの舌部分切除では、とくに大きい支障はきたしません。
T3以上の進行がんで広範囲切除を行ったとき、嚥下障害や構音障害といった症状をきたします。嚥下障害をおこしそうな場合、輪状咽頭筋切断術や喉頭挙上術といった嚥下機能補助手術を同時に行うこともあります。
当科では、T1やearly T2であれば、治療後の後遺症が少ないため舌部分切除を行っています。

治療後・予後

(当院の治療成績)2014年耳鼻咽喉科臨床学会発表

2003年6月〜2014年1月 54例(男性38例 女性16例)
StageⅠ23例、Ⅱ10例、Ⅲ3例、Ⅳ18例

5年生存率

79.4%(StageⅠ90.7%、Ⅱ80%、Ⅲ100%、Ⅳ60%)

5年疾患特異的生存率

87.3%(StageⅠ90.7%、Ⅱ100%、Ⅲ100%、Ⅳ73.7%)