ペースメーカー部門

ペースメーカー部門

正確性はもちろんですが、緊急性の高いペースメーカー治療も、臨床工学技士がいち早く対応することで、手術、救急治療、外来診察時におけるタイムラグを減らす事で、迅速に治療が行える体制にあります。

臨床工学技士は心臓植え込みデバイス操作・管理のProfessional

横須賀共済病院臨床工学科は除脈性不整脈や頻脈性不整脈の患者様に対し、2名の技士が担当し年間約200例の心臓ペースメーカー・植込み型除細動器等の新規植え込み手術や交換手術に立ち会い、手術時の安全を確保しております。
また、約1000人の外来フォローアップを行い、患者様がより良い生活が送れるよう医師と相談し最良の設定を心がけております。

関連する専門用語の解説

不整脈とは?

心臓の異常なリズムを不整脈といいます。不整脈には様々な種類が存在し、全く自覚症状を伴わない不整脈もありますが、動悸・息切れなどの自覚症状の出現や、失神や心不全の合併、なかには突然死を生ずるものもあります。
不整脈の種類としては、大きく分けると脈が遅くなる徐脈性不整脈、脈が速くなる頻脈性不整脈、脈が飛ぶ期外収縮などがあります。

除脈性不整脈とは?

徐脈とは、脈拍数が1分間に50回以下のものをいいます。
明らかな理由がなく徐脈を生じた場合は刺激伝導系に異常があるためであり、しばしばペースメーカー植え込みの適応となります。症状は、全身倦怠感・脱力感・めまい・ふらつき・失神・息切れなどです。

徐脈性不整脈は大きく分けて3種類あり、下記のとおりです。

1. 洞不全症候群
洞結節の障害で一時的に電気信号が送られなくなったり、少なくなったりする不整脈
2. 房室ブロック
拍動の電気信号が心臓上部の心房から下部の心室へ伝わらなかったり、伝わりにくかったりする不整脈
3. 徐脈性心房細動・粗動
房室結節の心房から心室への脈拍の伝わり具合が極端に低下した不整脈

※徐脈性不整脈の治療法は現在のところ植込み式ペースメーカーの埋め込みのみです。

※この治療は、下記内容を目的として行います。

  1. 徐脈に伴う症状(めまい、失神)の改善
  2. 突然死の予防
  3. 心機能低下・心不全の予防や改善など
植込み式ペースメーカー(PM)手術

植込み式ペースメーカー(PM)手術は、一般的には右心房と右心室にリードと呼ばれる電線を留置し、右胸か左胸に電池本体を植え込む手術となります。
医師がリードを留置する際に、臨床工学技士がリードの閾値チェック・感度チェック・抵抗値チェック等を行い、最良の場所に留置されるよう医師と相談しながら手術を進めていきます。
リードの留置場所が決定したら、電池本体をリードに接続し最終チェックを行います。
また、退院後は、ペースメーカー外来で定期的にPMチェックを行わせていただいております。

頻脈性不整脈とは?

心房性頻脈と心室性頻脈があり、心房性頻脈には心房頻拍や心房細動があります。
心房性頻脈には植込み型除細動器の適応にはなりません。
心室性不整脈には心室頻拍や心室細動があり、これらを引き起こす原因がさまざまな治療によっても取り除けない場合は植込み型除細動器の適応となります。

心室頻拍とは?

下記の2種類があります。

  1. 心室に異常な興奮性を有する心筋細胞が存在して心臓を興奮させることにより頻拍を生ずる場合
  2. 心筋梗塞後などの障害心筋の周りを興奮が旋回して頻拍を生じる場合

致死的な不整脈である心室粗細動に移行したり、心機能が低下したりすることがあります。
治療は、異常興奮部位のアブレーション、もしくはリエントリー回路のアブレーションでの離断です。
心機能の悪い方は特殊なペースメーカー(ICD, CRTD)埋め込みを要することがあります。

心室細動(心室粗動)とは?

心室細動(心室粗動)が起こると心室は秩序なく興奮し心臓が震えてしまいます。血液は送り出されず、たちまち体内の酸素が欠乏します。心室細動になると通常、数秒以内に意識を失います。
このような状況では致死的であり、心停止と呼ばれています。
心房細動と言葉は似ていますが、心房はサブポンプであり血圧にさほど影響を与えないのに対し、心室はメインポンプであるため症状は全く異なり、危険度が増すことになります。
心室細動を生じうる可能性のある方としては、心筋症や心筋梗塞後などの心機能の低下した方や、ブルガダ症候群やQT延長症候群などで生じる場合もあります。

ブルガダ症候群とは?

昔からいうポックリ病の方の大部分がこの病気ではないかと言われています。
特徴的な心電図の形(右側胸部誘導V1-2で特徴的なST上昇)を認める場合が多く、中には日によって心電図が変化する方もおられます。

QT延長症候群とは?

QT延長症候群は様々な病態から成り立ち,多形性心室頻拍や心室細動などの重症な不整脈をきたし,死亡の原因ともなりえる病態です。
QT延長症候群は,電解質異常など後天性のものから遺伝子異常まで様々な原因で起こします。

植込み型除細動器(ICD)手術

植込み型除細動器(ICD)手術は、一般的には右心房と右心室にリード(右心室にはショックリード)と呼ばれる電線を留置し、右胸か左胸に電池本体を植え込む手術となります。
医師がリードを留置する際に、臨床工学技士がリードの閾値チェック・感度チェック・抵抗値チェック等を行い、最良の場所に留置されるよう医師と相談しながら手術を進めていきます。
リードの留置場所が決定したら、電池本体をリードに接続し接続チェックを行います。
最後に除細動機能が正確に作動するか確認するテスト(DFTテスト)を行っております。
退院後は、ペースメーカー外来で定期的にICDチェックを行わせていただいております。

心室再同期療法(CRT=Cardiac Resynchronization Therapy)

現在、薬の治療によって症状の改善しない重症心不全に対しては心臓移植といった治療手段もありますが、臓器提供者の慢性的な不足等により進んでいなのが現状です。
また補助人工心臓も開発されておりますが、装置の性能に改善の余地があります。
このような状況下で重症心不全症状を改善する治療として心臓再同期療法(CRT=Cardiac Resynchronization Therapy)があります。

この治療は、(右心房と)右心室に加え、全身に血液を送り出す左心室にも、ほぼ同時に電気刺激を与えて心臓の機能を高めることで、下記3点の改善を目的としております。

  1. 心不全の予防や改善
  2. 生命予後の改善
  3. 生活の質(QOL)の改善

このような治療においても臨床工学技士は医師とともに活躍しております。

ペースメーカー外来
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