下部消化管外科|専門分野のご紹介

 

診療内容

 下部消化管の疾患には、良性疾患・悪性疾患さまざまなものがありますが、主に大腸癌の治療を担っています。大腸癌の治療では、手術療法と化学療法が主な治療法となりますが、当科では、手術療法のみならず、術後の補助化学療法(再発予防目的に抗がん剤治療を行うこと)、進行再発大腸癌に対する治療的化学療法まで取り組んでおります。

 大腸癌の診断・治療について、下部消化管担当:諏訪が下記のウェブサイトで詳しく解説していますので、参照ください。


取り組み

 基本的な治療方針は大腸癌治療ガイドラインに準じた標準治療を行っておりますが、当科では、よりよい治療成績の向上を目指して先進的な治療にも取り組んでおります。

腹腔鏡下手術

 近年では大腸癌手術に対する腹腔鏡下手術が、従来の開腹手術に代わりうる術式として広く普及してきております。全国的な統計では、全大腸癌手術の約半数が腹腔鏡下手術で施行されていることが示されております。当科では、早期より腹腔鏡下手術の利点に着目し、その技術向上に取り組んできました。現在では、大腸癌手術の約95%は腹腔鏡下で施行しております。

インドシアニングリーンによる近赤外光観察

 インドシアニングリーンを静脈注射・局所注入し、近赤外光観察を行うことで、血管やリンパ管を蛍光させ非侵襲的に観察することが可能です。当科では、この手技を用いて、腸管血流の評価や、リンパ流観察を行っています。吻合部腸管(切除後に腸管と腸管をつなぐ部分)の血流をより視覚的に評価することで術後の吻合部のトラブルを減少させることや、術中にリンパ流観察を行うことで、より適切な範囲のリンパ節郭清(癌の転移しやすい範囲のリンパ節を同時に切除すること)を行うことを目指しています。


同じ部分を、左:通常光観察 右:近赤外光観察
近赤外光観察では、リンパ節およびリンパ流が確認できる。

経肛門的直腸間膜切除術

 直腸癌の手術では、骨に囲まれた骨盤内での操作が必要となりますが、特に狭骨盤の男性や、肥満症例、腫瘍が大きい症例では骨盤深部の操作難易度が高くなります。その解決方法の一つとして、「経肛門的直腸間膜切除術(TaTME:Transanal total mesorectal excision)」という術式が注目されています。TaTMEとは、腹腔側と肛門側の両方から手術を行う方法で、当院では2チームに分かれ、同時に腹腔操作と経肛門操作を行っています。経肛門操作を行うことで、腹腔側からでは難しい骨盤深部の剥離を、より適切な剥離層を保ちながら行うことが可能となり、また、2チーム同時に開始することで手術時間の短縮が可能となり、より患者様への負担が抑えられると考えています。


直腸癌のTaTME手術 (2チームで手術)