放射線治療
放射線治療の特徴は、臓器の形態や機能を温存でき、病巣以外への影響が少なく、比較的低侵襲な治療が可能なことです。当院では平成22年、放射線治療装置リニアックONCOR impression Plus(東芝社製)を導入いたしました。本装置は最新のマルチリーフコリメータを搭載し、さまざまな臨床ニーズに対応した放射線治療が行えます。高精度な位置精度管理にも対応しており、部位によっては照射直前に位置照合画像を取得するIGRT(画像誘導放射線治療)も実施しております。当院は安全かつ高精度の放射線治療を推進することを目的として策定された日本放射線腫瘍学会認定施設です。詳しい内容は担当スタッフ(医師、診療放射線技師、看護師)へお気軽にお尋ね下さい。
放射線治療室1. 放射線治療とは
腫瘍を治すのに効果的な、放射線を使った治療です。放射線は目に見えず、身体にあたっても何も感じません。
病気の細胞は放射線にあたると徐々に死滅します。
病巣だけ限局して放射線が当たるように、放射線の種類を選択します。
ですから、放射線を使えば、正常なダメージを最小限にし、正常な機能を温存して治療することが出来ます。
2. 放射線治療の目的
病気を治癒させることを目的とした根治的治療と症状の改善を目的とした姑息的(緩和)治療があります。
病気の再発を防止する予防照射は根治照射に部類します。
例えば、病気の再発を防止する目的で、乳癌手術後の残存乳房に対して予防的放射線治療が行われます。
- 根治的照射
- 臓器の形態や機能を温存しながらも病気の治癒を一番の目的とします。
放射線単独での治療や、放射線と化学療法を併用した治療をおこないます。
頭頸部、肺、前立腺、リンパ腫などの疾患で行われます。
手術前や手術後に照射をおこなうこともあります。
- 姑息的(緩和)照射
- 骨転移に対する疼痛の緩和や脳転移に対する神経症状の改善を目的とします。
また、肺にできた病変が血管や気管を圧迫して顔面、上肢のむくみ、呼吸困難等の症状が現れた場合に、 その症状を改善するために緊急で照射を行うこともあります。
生活の質(QOL : Quality of Life)の向上を考える上では大切な治療です。
3. 放射線治療の方法
治療医により治療計画された病変に対して、診療放射線技師が照射をおこないます。
毎回の治療は、照射範囲や基準となる位置(皮膚上)に付けた印に正確に合わせて治療をおこないます。
治療時間は、外部照射ではおよそ治療室入室から退室まで対象疾患にもよりますが10~20分の時間を要します。
4. 放射線治療の進め方
放射線治療は、「診察」、「治療計画」、「照射」、「観察」の4つのステップで成り立っています。
- (1) 診察
- 治療専門の医師が診察し、検査画像や検査結果をもとに放射線治療の適応や治療方針を決定します。
治療部位に対して、放射線の種類や線量、照射回数等を決定します。
- (2) 治療計画
- 放射線治療を始める前に、適切な治療範囲や照射方法を決定します。
当施設では専用の位置決めCT装置を用いて撮影をおこない、治療計画装置で最適な治療範囲や照射方法を決定します。
使用する照射装置のビームデータに合わせて治療計画装置により、 放射線量の計算や体内の線量分布の確認などをおこない、 最適な照射方法を決定します。
外部照射の場合は、治療計画時に治療部位上の皮膚に印を付けます。(皮膚マーキング)
正確に治療するために必要ですから消えないように気をつけて下さい。薄くなっても、自分で書き足したりしないで、早めに御連絡下さい。また、少し色落ちすることがありますので、汚れてもよい服装で来院してください。頭部や頸部の場合にはシェルというお面のような専用の固定具をつくり、その上に印をつけますので、顔や頸に直接印をつけることはありませんが身体にマーキングさせて頂くことがあります。治療計画は放射線治療医が臨床画像情報をもとに照射方法を決定します。
治療計画にはCT画像を用います。照射部位に適した放射線の種類やエネルギー、照射方向等を選択します。
- (3) 照射
- 治療室内には患者さん以外は入れません。治療台は狭いので上がり降りに注意してください。患者さんの確認のために御名前をお伺いします。
照射中は患者さんが一人になりますが、担当の技師と看護師が操作室のテレビモニターで患者さんの様子を見ていますので心配いりません。
またマイクを通して会話ができますので、具合が悪いときには、手等で合図をするか、 声でお知らせ下さい。
毎回の治療時は、通常照射に関しては、位置合わせを含めて10分程度です。実際に放射線が照射されている時間は1~3分程度です。
照射中は放射線による痛みは全くありません。 また、前立腺の治療などでは治療装置が回転しながら治療する場合や寝台が移動する場合があります。
位置あわせ時から、治療中は体を動かさないで下さい。治療中に動きますと、照射位置がずれてしまい、病巣に十分な放射線があたらなかったり、まわりの組織に悪影響をおよぼす可能性があります。
痛み等により照射中の体位が保持することが困難な時は、事前に申し出て下さい。 痛み等の配慮をおこないながら治療をおこないます。
人間に当てられる放射線の限界量は定まっており、同じ場所には原則一生に一度しか放射線治療が出来ません(やり直しが出来ません)。途中でやめてしまうと、効果が出ないばかりか今後の放射線治療が出来なくなる場合もあります。治療期間を大事に考えて頂き、予定を立てるようにして下さい。照射は予約制です。
予約時間は事前に申し出ていただければ、日にちごとに変更することが出来ます。
予約時間に遅れる場合やお休みする場合は必ずご一報ください。(下記電話番号)
- (4) 観察
- 放射線治療をおこなっている期間中は放射線科医師による診察があります。診察日以外でも強い症状がある場合は申し出て下さい。すべての放射線治療終了後は紹介元の科あるいは紹介元病院の方で経過を見て頂きます。
横須賀共済病院 放射線治療外来(TEL:046-822-2710内線 4107)