悪性腫瘍
当科の癌治療は日本婦人科腫瘍学会から発刊されている悪性腫瘍治療ガイドラインに沿って行っています。婦人科癌の手術においては消化器外科を含め他科と協力のうえ手術を行い、また病理専門医も常勤しているため、必要なときには術中迅速病理診断を行うことで根治性を保ちつつ患者さんへの負担が少ない手術を心掛けています。抗癌剤治療や放射線治療も行っています。抗癌剤の種類によっては外来化学療法室でも行うことができ、患者さんの生活を損なわないような治療方針を一緒に相談していきます。2016年は、1年間で79例の婦人科悪性腫瘍手術(上皮内癌を除く)を行いました。いずれの癌でもMRIやCTなどで詳細な診断を行い、治療方針の個別化に努めています。2017年度より子宮体癌に対する腹腔鏡下手術を導入しました。開腹手術と比較してより早期の回復、退院が可能となりました。
子宮頚癌
子宮頚癌は若年者にも多くみられる癌で、初期の場合はほとんど症状がないため定期的な子宮頚がん検診受診を強くお勧めします(当科では検診のみの受診は行っていないため、お近くの産婦人科か当院の健診センターでの受診をお願いします)。がん検診で異常が認められた場合、まずは精査のために外来で組織診を行います。その上で高度異形成という前癌病変、あるいは上皮内癌〜微小浸潤癌(臨床進行期Ia1期)というごく初期の癌であれば、円錐切除による治療を行っています。進行癌であれば広汎子宮全摘術(子宮だけではなく靭帯やリンパ節を広く摘出する手術)や放射線療法、抗癌剤を単独あるいは組み合わせて治療を行っていきます。
子宮体癌
子宮体癌は周閉経期や、あるいは若年者でも月経不順、肥満がある方に発症しやすい癌です。症状として不正出血があります。子宮体がん検診(細胞診)で異常を疑う場合、外来組織診や入院して麻酔下での子宮内膜掻把で確定診断を行います。診断後は手術療が第一選択になりますが、ホルモン治療や術前・術後抗癌剤治療、放射線療法も行っています。
卵巣癌
卵巣は体の奥にある臓器のため、卵巣癌は症状がないまま進行してしまう病気です。子宮頚癌や子宮体癌と異なり外来でのがん検診/組織診は困難のため画像精査と腫瘍マーカーから診断していきます。通常手術療法と抗がん剤治療を組み合わせた治療を行っていきます。妊娠希望のある卵巣腫瘍の方の場合、子宮や片側の卵巣が温存可能かどうか、症例背景も含め相談しながら治療をすすめていきます。進行癌、再発症例には個々の症例に応じて治療を行います。癌の進行に伴い、腹水が貯留し苦しい場合には、CART(腹水濾過濃縮再静注療法)という腹水を抜いて血管内に戻す治療を行います。